「おい、お前、大丈夫か」
今時ロン毛かよ。
そう思いつつも、俺はトイレに寝そべっている酒くさい男の肩を揺すったり、
頬を叩いたりした。意識はない。完璧に潰れている。
「おい、」
もう一声かける。やっぱり返事はない。
ここまで確認すると、俺はこの男のスーツの中の、
ポケットというポケットを探った。
あった。
引っ張り出したのは、俺と同じ会社の社員証。
仏頂面をしている写真の横に、若島津健、と書いてあった。
所属している部は違うが、同期で入った新人だ。
「よし」
にやり。不敵に笑うと、俺はロン毛男の肩を担いで、店を出た。