ラスト・クリスマス p-2〈H-side〉

(こいつ、スカしたツラしてるくせによく騒ぐな)

大声を出したっきり真っ白になっちまってる若島津健を見下ろして、俺は腕を組み直した。
「だから、ようするにヤッたんだよ。俺とてめえは」
「…」
若島津は無言で毛布を引きはがした。さっきまでこいつが爆睡していたシーツは当然昨日のまんまで、ぐしゃりと丸まったティッシュまで転がっている。奴はもう一度目を見開いて「…マジ、ですか」と呟いた。
「これがマジじゃなくて何だっつーんだよ」
「…ですよね」
所在なげにしている若島津の肩をぽん、と叩き、顔を近づけた。
「心配すんな、けっこう悪くなかったって山田に言っといてやる」
同僚の、分厚い唇がやたら目立つ奴の名前を出した途端血相が変わった。
「…え!?な、なんで山田さんがここに出てくるんで」
「同じ部で働いてるからな」
お前、山田が好きなんだろう?とにやりと笑ってやると、若島津は
「…どうすれば、いいんだよ」
と項垂れながら言った。勝利の手応えに、思わず口の端がつり上がる。


「物わかりいいじゃねえか」